下の表は、ヴェルディのすべてのオペラ作品とレクィエムについて、その原題、邦題、作品の形式、台本作家、初演の場所をリストしたものです。
オペラ作品については、2つの改作/改名作品を含む全28作品を、初演年代順に番号を付けて並べてあります。
原作と同名の改訂版(使用言語の違いによる名称の差は別として)は、初演年代にかかわらず、原作の下に番号を付けず表示してあります。

  原題 邦 題 形式 台本 初演
(邦題については、脚注参照) 都市/劇場 年月日
1 Oberto, conte di San Bonifacio サン・ボニファーチョの伯爵
オベルト *注1
dramma 全2幕 T. Solera ミラノ/スカラ座 1839/11/17  
2 Un giorno di regno
(Il finto Stanislao)
一日だけの王様 
(偽のスタニスラオ) *注2
melodramma giocoso 全2幕 F. Romani ミラノ/スカラ座 1840/9/5 カッコ内の別称は1845年に初使用
3 Nabucodonosor(Nabucco) ナブコドーノゾル(ナブッコ) *注3 dramma lirico 全4部 T. Solera ミラノ/スカラ座 1842/3/9  
4 I Lombardi alla prima crociata  第一次十字軍のロンバルディーアの人々 *注4 dramma lirico 全4幕 T. Solera ミラノ/スカラ座 1843/2/11  
5 Ernani  エルナーニ *注5 dramma lirico 全4部 F. M. Piave ヴェネツィア/フェニーチェ劇場 1844/3/9  
6 I due Foscari  二人のフォスカリ *注6 tragedia lirica 全3幕 F. M. Piave ローマ/アルジェンティーナ劇場 1844/11/3  
7 Giovanna d'Arco ジョヴァンナ・ダルコ *注7 dramma lirico プロローグ付 全3幕 T. Solera ミラノ/スカラ座 1845/2/15  
8 Alzira アルヅィーラ *注8 tragedia lirica プロローグ付 全2幕 S. Cammarano ナポリ/サンカルロ劇場 1845/8/12  
9 Attila アッティラ *注9 dramma lirico プロローグ付 全3幕 T. Solera/F. M. Piave ヴェネツィア/フェニーチェ劇場 1846/3/17  
10 Macbeth  マクベス *注10 melodramma 全4幕 F. M. Piave/A. Maffei フィレンツェ/ペルゴラ劇場 1847/3/14  
  Macbeth (改訂版) マクベス(改訂版) opéra 全4幕(仏語) C. Nuitter/A. Beaumont(仏訳) パリ/リリック劇場 1865/4/21 F. M. Piaveの原本を仏訳
11 I masnadieri 群盗 *注11 melodramma 全4部 A. Maffei ロンドン/女王陛下劇場 1847/7/22  
12 Jérusalem イェルサレム *注12 opéra 全4幕(仏語) A. Royer/G. Vaëz
(仏語改作)
パリ/オペラ座 1847/11/26 《I Lombardi》の仏語改作/改名
13 Il corsaro イル・コルサーロ *注13 opera 全3幕 F. M. Piave トリエステ/グランデ劇場 1848/10/25  
14 La battaglia di Legnano レニャーノの戦い *注14 tragedia lirica 全4幕 S. Cammarano ローマ/アルジェンティーナ劇場 1849/1/27  
15 Luisa Miller ルイーザ・ミッレル *注15 melodramma tragico 全3幕 S. Cammarano ナポリ/サンカルロ劇場 1849/12/8  
16 Stiffelio スティッフェーリオ *注16 dramma 全3幕 F. M. Piave トリエステ/グランデ劇場 1850/11/16  
17 Rigoletto リゴレット *注17 dramma 全3幕 F. M. Piave ヴェネツィア/フェニーチェ劇場 1851/3/11  
18 Il trovatore イル・トロヴァトーレ *注18 dramma 全4幕 S. Cammarano/L. E. Bardare ローマ/アポッロ劇場 1853/1/19  
  Le trouvère ル・トルヴェール dramma 全4幕 E. Pacini (仏訳) パリ/オペラ座 1857/1/12 《Il Trovatore》の仏語版
19 La traviata ラ・トラヴィアータ *注19 melodramma 全3幕 F. M. Piave ヴェネツィア/フェニーチェ劇場 1853/3/6  
20 Les Vêpres siciliennes シチリアの晩鐘 *注20 opéra 全5幕(仏語) E. Scribe/C. Duveyrier パリ/オペラ座 1855/6/13  
21 Simon Boccanegra シモン・ボッカネグラ *注21 melodramma プロローグ付 全3幕 F. M. Piave/G. Montanelli ヴェネツィア/フェニーチェ劇場 1857/3/12  
  Simon Boccanegra (改訂版) シモン・ボッカネグラ(改訂版) melodramma プロローグ付 全3幕 A. Boito (改作) ミラノ/スカラ座 1881/3/24  
22 Aroldo アロルド *注22 melodramma 全4幕 F. M. Piave リミニ/テアトロ・ヌオーヴォ 1857/8/16 《Stiffelio》の改作/改名
23 Un ballo in maschera 仮面舞踏会 *注23 melodramma 全3幕 A. Somma ローマ/アポッロ劇場 1859/2/17  
24 La forza del destino 運命の力 *注24 melodramma 全4幕 F. M. Piave サンクト・ペテルブルク/帝室歌劇場 1862/11/10  
  La forza del destino(改訂版) 運命の力(改訂版) opera 全4幕 A. Ghislanzoni(改訂)  ミラノ/スカラ座 1869/2/27 Piaveの原作を改訂
25 Don Carlos ドン・カルロス *注25 opéra 全5幕(仏語) F. J. Méry/C du Locle パリ/オペラ座 1867/3/11  
  Don Carlo ドン・カルロ opera 全4幕 A. de Lauzières/A. Zanardini ミラノ/スカラ座 1884/1/10 伊語による改訂版
26 Aida アイーダ *注26 opera 全4幕 A. Ghislanzoni カイロ/オペラ座 1871/12/24  
27 Otello オテッロ *注27 dramma lirico 全4幕 A. Boito ミラノ/スカラ座 1887/2/5  
  Otello(パリ改作版) オテッロ(パリ改作版) dramma lirico 全4幕 A. Boito/Du Loche
(仏訳)
パリ/オペラ座 1894/10/10 初演は10月12日説あり
28 Falstaff ファルスタッフ *注28 commedia lirica 全3幕 A. Boito ミラノ/スカラ座 1893/2/9  
  Messa da requiem レクィエム     ミラノ/サン・マルコ教会 1875/5/22  

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[ 注 ]
■ヴェルディのオペラ作品の邦題について
日本ヴェルディ協会は、2008年に、外部有識者を交えた「ヴェルディ・オペラ邦題委員会」を立ち上げ、改作を含むヴェルディの28のオペラ作品の邦題の見直しを行いました。それまで、ヴェルディのオペラ作品については、必ずしも統一的な邦題がなく、中には適当と思われない邦題も見受けられことが、このプロジェクトを手掛けた理由です。その後、協会内外から、原題の表記法および邦題そのものについて若干の異論も出たことや、最近の知見に基づき、ヴェルディ年である2013年に再度「邦題委員会」で検討を行いました。

■検討は以下の基本方針のもとに行われました:
 ●原題表記は、シカゴ大学プレスの全集版(批判校訂版)に準ずる。
  楽譜未刊行のものは暫定案であり、刊行された楽譜の表記と異なれば、その時点で訂正するものとする。
 ●歴史的事件の訳語は、原則として、歴史の呼称に従う。
 ●人名は、外国人であっても、原則として、イタリア語の読み方にする。
 ●アクセントのある母音は、原則として、長音で表記する。

以下は、検討結果に基づく原題、邦題およびその根拠を表にしたものです。
日本ヴェルディ協会は、そのかかわるすべての公演・出版等において、この表記を使用します。

ヴェルディ・オペラ邦題解説

1 《サン・ボニファーチョの伯爵オベルト》: サン・ボニファーチョは領地を指すので名前と区別するために「の」を入れるのが好ましいが、「サン・ボニファーチョ伯爵オベルト」でも良い。また略称として「オベルト」で良い。
2 《一日だけの王様》: 直訳すれば「王座についた一日だけ」となるが、オペラのタイトルとしては意訳とした。<regno> は王の治世を意味し、このドラマは王に成り代わった人物のもとで起きた一日の出来事を表わしている。なお、この台本は <Il finto Stanislao> のタイトルでギロヴェッツのために書かれたもの(1818年)の改作で、元のタイトルで上演されることもある。その場合の邦題は「偽のスタニズラーオ」とする。
3 《ナブコドーノゾル》: Nabucco は略称としてオペラの中でも使われ、またオペラのタイトルとしても使用されるが、正式名称は Nabucodonosor である。略称の場合は「ナブッコ」とする。
4 《第一次十字軍のロンバルディーアの人々》: ロンバルディーアは十字軍時代の北イタリアのロンバルディーア地方をさす。Lombardi はその地域出身の人 Lombardo の複数である。長さを考慮して「第一次十字軍のロンバルディーア人」、さらに略称として「イ・ロンバルディ」で差し支えない。
5 《エルナーニ》: 主人公の名前である。オペラの中で呼ばれる。
6 《二人のフォスカリ》: フォスカリはヴェネーツィア貴族の名前である。
7 《ジョヴァンナ・ダルコ》: 主人公の名前である。歴史上の人物ジャンヌ・ダルクだが、オペラの中でも使われるイタリア名とする。
8 《アルヅィーラ》: 主人公の名前である。アルツィーラでは明らかに響きが異なるので、この表記とする。
9 《アッティラ》: 主人公の名前である。オペラの中で呼ばれる。
10 《マクベス》: 主人公の名前である。オペラの中で実際に呼ばれるところでは Macbetto と表記され、「マクベット」と発音される。しかしタイトルを含め役名はシェイクスピアのまま Macbeth と表記されているので、邦題は「マクベス」とする。
11 《群盜》: masnadiero(原意は「集団に属して警備にあたる人」)の複数。時代が下り、悪行を働く盗賊団にも使われるようになった。ここではシラーの戯曲の一般的な邦題で、内容にも合致する「群盜」とする。
12 《イェルサレム》: 実在の地名であるので一般的な表記とする。
13 《イル・コルサーロ》: <il corsaro> と <il pirata> はともに「海賊」と訳されるが、前者は政府の許可を得て敵国の船に対してのみ海賊行為を行うものであり、後者は犯罪として海賊行為を行うものという違いがある。日本語の「海賊」は一般に後者を意味し、このオペラの主人公のイメージとは異なるので、邦題を「イル・コルサーロ」とする。なお <il corsaro> は船長のみをさして使われる用語で、ここでは主人公コッラードをさすので、定冠詞 il をつけた訳語とする。
14 《レニャーノの戦い》: レニャーノは実在する地名。またこれは歴史上の会戦なので、その表記にならう。
15 《ルイーザ・ミッレル》: 主人公の名前である。オペラの中では姓名のうち名 Luisa だけしか発音されないが、姓名ともにイタリア語の発音に統一して「ルイーザ・ミッレル」と表記する。 
16 《スティッフェーリオ》: 主人公の名前である。固有名詞化してオペラの中で使われるので発音通り。
17 《リゴレット》: 主人公の名前である。オペラの中で発音される。
18 《イル・トロヴァトーレ》: 吟遊詩人を意味し、音楽史でトルバドゥール、トルヴェールなどの用語が定着しており、そのイタリア語である。また主人公マンリーコをさしているので、定冠詞 il を残す。なお、フランス語による改訂版 Le Trouvère については「ル・トルヴェール」と表記する。
19 《ラ・トラヴィアータ》: 原題は「道を外れた女」という意味の造語である。よく使われる「椿姫」はデュマの原作からの訳語であるが、ヴェルディは意図的にタイトルを変更している。このタイトルは主人公ヴィオレッタ個人をさすため定冠詞 la を残す。
20 《シチリアの晩鐘》: これは1282年にシチリアに起きた歴史的事件をさすので、歴史における訳語にならう。「シチリアの晩鐘」「シチリアの晩祷」の訳語が使われている。Vêpre は本来夕べのある「時間」を意味し、「晩祷」はその時間に行われるキリスト教の典礼である。暴動はその時刻を告げる鐘の音を合図に起こったもので、オペラの邦題としては「シチリアの晩鐘」がふさわしい。
 なお現在のところイタリア語に翻訳された版で上演されるのが一般的であり、その場合の原題は <I vespri siciliani> である。
21 《シモン・ボッカネグラ》: 主人公の名前である。イタリア語の発音のまま。
22 《アロルド》: 主人公の名前である。イタリア語の発音のまま。
23 《仮面舞踏会》: 原作はスクリーブの「ギュスターヴ三世、または仮面舞踏会」であるが、ヴェルディは検閲を通すために舞台をスウェーデンからボストンに移し、国王を伯爵に変更し、タイトルも「仮面舞踏会」とした。上演にあたって場所や登場人物名を原作に戻すことがあるが、これは演出上の工夫である。どのような演出であれ、基本的にタイトルは <Un ballo in maschera> であり、邦題は「仮面舞踏会」である。
24 《運命の力》: そのままの訳で問題はない。
25 《ドン・カルロス》: フランス語によるグランド・オペラ(1867年初演)であり、主人公の名前をフランス語発音に近い表記にする。イタリア語による改訂4幕版(1884年)と後の改訂5幕版の原題は <Don Carlo> であり、こちらの邦題は「ドン・カルロ」とする。
26 《アイーダ》: 主人公の名前であり、オペラの中で発音される。
27 《オテッロ》: 主人公の名前であり、オペラの中で発音される。
28 《ファルスタッフ》: 主人公の名前である。シェイクスピアの戯曲の場合、日本語では「フォルスタッフ」と発音・表記されるが、オペラの中で呼ばれるイタリア語発音に従って「ファルスタッフ」と呼ぶ。

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